契約の電子化②

1 契約の電子化

従来,契約は紙媒体を使用して行われることが一般的でした。

一部の契約を除き,契約は口頭でも成立しますが,後に争いになった場合の証拠とするために紙媒体を用いて契約が取り交わされてきました。

もっとも,紙媒体による契約では,遠隔地にいる相手方との契約に郵送費用や時間がかかってしまうというデメリットがあります。

契約の電子化はこのようなデメリットを解消するものにもなりえます。

2 契約の電子化によるメリット

⑴ 作業の効率化

先に述べたように紙媒体による契約では,遠隔地にいる相手方と契約を締結しようとする場合,一方の当事者が契約の内容を紙媒体に印刷し,署名・押印したうえで相手方当事者に契約書を郵送し,署名・押印をしてもらって返送を受けるという処理が必要になります。

上記のような工程の中で,郵送のために必要な印刷費用,人件費が必要となります。

また,郵送でのやり取りを基本とするため,契約の成立まである程度期間を要するというデメリットがあります。

契約が電子化されると,紙媒体への印刷や郵送作業は不要となり,費用も時間もかかりません。

契約書の作成は,パソコンなどを用いているのにも関わらず,取り交わしについては現実の郵送方法をとらなければならないとなると上記のような問題点が生じますが,契約の取り交わしが電子化されていれば作業の効率向上に繋がります。

⑵ 印紙代の削減

一般に契約書等を作成する際には印紙代が必要になることがあります。

契約の電子化によれば印紙代を不要とすることができると考えられるので,この点も契約の電子化のメリットと言えるでしょう。

⑶ 災害等への対策

紙媒体によって取り交わされる契約の場合には,証拠として契約書を保管しておく必要があります。

契約書は,基本的には厳重に保管されるものですが,自然災害や戦争,テロによって失われてしまうこともリスクの一つとして考えられます。

契約の電子化によれば,そのような場合であってもデータが保管されていれば失われてしまうというおそれがありません。

3 終わりに

以上のように契約の電子化には,紙媒体にはない様々なメリットがあります。

弁護士業界でも,電子契約書に触れる機会は今後ますます増えると言えるでしょう。

電子契約について知っておく必要は高いと思われます。

本日のブログは以上です。

 

契約の電子化

2019年10月1日から,消費税が増税されました。

従来の8%から10%への増税により,9月の間に駆け込み消費をした消費者の方も多いのではないでしょうか。

私もその一人でしたが,10月の増税後,蓋を開けてみれば各社が消費者離れを防止するため,各種のサービスを行っており,増税前よりお得に購入できる場合もしばしば見かけます。

増税後,クレジットカードや電子マネーでの支払いに2%や5%の還元がなされるというチラシを見かけることが増えました。

東京オリンピックを見据え,海外からの観光客の決済簡便化を図ろうとする政府の政策ともあいまって,決済における非現金化の流れが進んでいます。

今年,一躍有名になったのはやはりPaypay でしょう。

とある日経紙の今年のトレンドランキングでもワークマンやタピオカなどと共にPaypayが上位にランキングされていました。

携帯電話の電池残量に依存するところや,回線混雑の影響を受けやすい(わざわざPaypayが使えるスーパーに買い物に行ったのに,回線混雑の影響で支払いをすることができず,やむを得ず現金で支払いを行ったという事案も散見されました。)というデメリットもありますが,支払いの簡便さやポイント還元等のメリットから今やPaypayを取り入れていない人を探す方が難しいほどに大流行しました。

このように支払段階での電子化が近年急速に進んでいる中で,私たち弁護士業界においても電子化が進みつつあります。

その一つが契約の電子化の流れです。

従来,契約は紙媒体を使用して行われることが一般的でした。

一部の契約を除き,契約は口頭でも成立しますが,後に争いになった場合の証拠とするために紙媒体を用いて契約が取り交わされてきました。

もっとも,紙媒体による契約では,遠隔地にいる相手方との契約に郵送費用や時間がかかってしまうというデメリットがあります。

電子契約ではこのようなデメリットはなく,瞬時に契約を交わすことができ,また,電子証明などを用いることによって証拠化も行うことができます。

まだ,一般的な認知度は低いですが,今後,電子契約が普及することは間違いないでしょう。

電子契約における本人確認や証拠化については改めてブログを書くことにいたします。

本日のブログは,以上です。

 

販売代理店と商標

前回のブログでは,販売店契約についてお話しました。

今回は,販売店契約と商標利用の関係について弁護士がご説明します。

販売店契約を締結し,自社が作成する商品を一定の地域において販売させる場合に,商品に付されている商品名やロゴなどを販売店に対して,どのような形で使用させるべきかという問題が生じます。

平たくいうと,販売店契約とは,販売店が大元の業者から商品を購入し,当該商品を販売店が影響を持つ地域において売りさばいて購入代金と売掛代金との差額で利益を出す契約になりますが,販売店が地域において商品を販売していくにあたっては,商品の名称やロゴを使用して販売を行うことが一般的に想定されています。

この時,当該商品名やロゴの商標を使用することになるため,大元の業者としては,自社の商標権が侵害されないか,侵害された場合にどのような措置をとるべきか講じておく必要があります。

販売店契約において,商標の使用許諾が黙示で行われることもありますが,後の不要な紛争回避の観点,自身の商品のブランド価値の維持の観点からは,使用許諾について明文で契約書の中に盛り込んでおく方が望ましいでしょう。

商標をあまりに自由に使用されると,ブランドイメージが傷つくおそれがあるばかりか,商標自体の取消しすらありうるため,注意が必要です。

商標の使用許諾を行う前提として,商品名称やロゴが商標登録しておくことが望ましいでしょう。

商標権の使用許諾をする場合には,その許諾の範囲を明確にしておくことも重要です。

使用目的,使用可能範囲,使用可能期間,有償か無償か,独占性の有無,その他使用する際の条件を明確にしておくと,後の紛争回避に役立つといえるでしょう。

また,使用許諾した商標につき,販売店側が勝手に変更することを禁止することも明記しておく必要があります。

商標の使用を許諾された者が商標を不正使用した場合には,当該商標が取り消されうるおそれがあるため,不正使用を防止することは非常に重要と言えます。

第三者の商標と組み合わせて当該商標を使用することや,使用許諾された商標に許可なく変更を加えたりすることを禁止することが望ましいでしょう。

販売店契約においては,大元事業者と販売店との間で商品の取扱いに関する事項が大きな争点となることも珍しくはありません。

商標権のライセンスに関しては,商品取り扱いのなかでも特に問題となりやすい部分であるため,販売店契約において特に注意するべき事項の一つといえるでしょう。

本日のブログは以上になります。

 

販売代理店契約④

1か月にわたり公開してきた販売代理店に関するブログも今回が一応の最終回です。

今回の弁護士ブログでは,販売店契約を締結する際に注意すべきポイントについてご紹介します。

 

1 独占性

一般的に,販売店と大元の事業者が販売店契約を締結する際には,独占性の条項が入れられることがよくあります。

ここで,独占性とは,販売店が,大元の事業者が販売店に対して販売したある製品を独占的に第三者に販売することができるということを意味します。

この独占性の条項があることによって,販売店は安心して当該製品の販売に注力することができます。

なぜなら,販売が独占的でなければ結局のところ当該製品に対して激しい価格競争が生じるおそれがあるために,大元の事業者から当該商品を購入して第三者へと販売し,その差額で利益をあげるという経済活動に支障を来す可能性があるからです。こうなってしまっては,販売店が販売店契約を締結するインセンティブが失われてしまうため,販売店契約には,独占性の条項が入れられることが多いのです。

2 最低購入義務

1で紹介した独占性の条項とあわせて入れられることが多いのが最低購入義務に関する条項です。

独占性は,販売店に利する部分が大きいものですが,この独占性の条項だけでは,仮に販売店が第三者に対して全く製品を売れず,在庫ばかりが増え,以降大元となる事業者から全く製品を購入しなくなった場合に,大元の事業者は独占性の条項があるために,他店と販売店契約を締結することもできず,結局のところ製品を全く売ることができなくなるという事態が生じてしまいます。

そこで,大元の事業者としては,販売店が大元の事業者からこれだけは必ず購入するといった最低購入義務を定め,上記のリスクに対応しようとするわけです。

独占性の条項と最低購入義務に関する条項とは必ずしも契約内容に双方を入れなければならないというものではありませんが,販売店契約を締結するにあたっては,慎重に検討するべき条項の一つといえるでしょう。

販売店契約が締結されるのは,名古屋のような都市部に限りません。

身近なものではないかもしれませんが,契約の肝について知っておくことは有用であると考えられます。

本日のブログは以上になります。

 

販売代理店契約③

前回までのブログでは,販売店契約と代理店契約の根本的な違いや,その他の違いをご説明しました。

本日のブログでは,販売店契約と似ているが異なる契約の例として,フランチャイズ契約をご紹介します。

1 フランチャイズ契約とは

フランチャイズという言葉は,一般の方でもよく耳にする言葉であると思います。

特によく耳にするのが,コンビニエンスストアのフランチャイズ契約です。

私が勤務する名古屋にも非常に多くのコンビニエンスストアがありますが,その中にもフランチャイズとして経営されているコンビニエンスストアは数多くあります。

一般的にフランチャイズ契約とは,本社であるフランチャイザーと加盟店であるフランチャイジーとの間で締結される契約であり,フランチャイジー(加盟店)は,フランチャイザー(本社)から商品を買い取り,その後,第三者である客へ当該商品を販売しています。

上記の流れは,前回までにご紹介した販売店契約と似ているものです。

2 販売店契約とフランチャイズ契約との違い

しかし,通常は,販売店契約とフランチャイズ契約とは別の契約体系であるとされています。

販売店契約の場合,販売店は,大元となる事業者から製品を購入して第三者に販売していくものの,その他の部分では自由であることが多いでしょう。

他方で,フランチャイズ契約の場合には,店舗デザインや店員の服装などもフランチャイザー(本社)の意向によって定められている場合が多いです。

たとえば,コンビニエンスストアでは,独立事業者であるフランチャイジー(加盟店)であっても,本社経営のコンビニエンスストアと同じ服装をしていますよね。

フランチャイジー(加盟店)にとっては,本社のブランド力,仕入れ力を利用することができますが,これらの場合には,フランチャイズ料をフランチャイザー(本社)に対して支払っている場合がほとんどです。

3 おわりに

本日は,販売店契約と似て非なる例としてフランチャイズ契約をご紹介しました。私の弁護士ブログの読者の皆さんが普段利用するコンビニエンスストアもここで紹介したフランチャイジー(加盟店)である場合があるかと思います。どのような経営,運営をしているのかという観点から見てみるのも面白いかもしれませんね。

販売代理店契約②

本日のブログは,前回の販売代理店契約に関するブログの続きです。

前回のブログでは,販売代理店契約とは,厳密には販売店契約と代理店契約とに区別されること,販売店契約と代理店契約との根本的な違いなどについてご説明しました。

販売店契約と代理店契約との違いは,他にもあります。

1 販売店契約と代理店契約との在庫リスクの違い

まず,販売店契約では,販売店が大元の事業者からある製品を購入し,その後に第三者に対して販売をするわけですから,購入した製品が売れなかった場合の在庫リスクを販売店が負うことになります

他方,代理店契約の場合,実際の売買契約の当事者は,大元の事業者と第三者になり,代理店は大元の事業者から製品を購入する義務などを負わないため,在庫に関するリスクを負いません。

もっとも,在庫に関するリスクについては,第三者から製品の申し込みがあった場合に,申込数の分だけ,大元の事業者と販売店の間で購入をするとして,在庫リスクを軽減する手法もあります。

2 支払リスク

販売代理店契約の場合,上記のとおり,販売店と第三者との間で売買契約が締結されますから,製品の対価の支払いは,第三者から販売店に対して行われます。

そのため,第三者が製品を購入したものの,製品の代金を支払うことができないといった支払に関するリスクは販売店自身が負うことになります。

他方で,代理店契約の場合には,直接の契約関係は,大元の事業者と第三者との間で締結されるため,製品の代金支払いに関するリスクを負うのは代理店ではなく,大元の事業者となります。

3 代金の決定

販売店契約の場合には,販売店が第三者に製品を売るため,代金の決定は販売店自身が行います。

他方で,代理店契約の場合には,あくまでも大元の事業者と第三者との間の契約になりますから,代金の決定は,大元の事業者が行うことになるでしょう。

4 おわりに

本日のブログは以上になります。

私が弁護士業務を行う名古屋でも販売代理店契約という言葉を耳にする機会は多くあります。

両者のメリット,デメリットを比較し,取引の実態に即した適切な契約を締結することが肝要でしょう。

販売代理店契約①

1 販売代理店契約の中身

近時,名古屋のような都市部におけるビジネスシーンにおいて,販売代理店契約という言葉を耳にすることが多くあるかと思います。

もっとも,販売代理店契約は,ビジネスシーンで多用される言葉ではあるものの,厳密には,販売店契約と代理店契約の2つの契約体系に区別されており,両者は,似て非なる契約体系となっているため,弁護士が法的視点から両者の違いをご説明します。

2 販売店契約と代理店契約の違い

販売店契約と代理店契約とは,一般的に,製品を販売する大元の事業者,販売店又は代理店,第三者の3者が登場することに相違はありません。

もっとも,販売店契約の場合には,大元の事業者と販売店との間にある製品の売買契約が締結され,その後,販売店と第三者との間に当該製品の売買契約が締結されます。

一方,代理店契約の場合には,代理店は本人である大元の事業者のために販売促進活動を行いますが,実際の売買契約は本人である大元の事業者と第三者との間に直接成立します。

代理店は,売買契約の直接の当事者にはならないということが,販売店契約と代理店契約の根本的な違いになります。

3 販売店契約と代理店契約の売上の違い

販売店契約の場合,大元の事業者からの購入価格と第三者への販売価格の差額を経済的利益として得ることが一般的に考えられています。

簡単にいいますと,販売店が大元の事業者からある製品を8,000円で購入し,第三者へ9,000円で販売すれば,1,000円の利益となるわけです。

これに対して,代理店契約の場合には,代理店は,本人である大元の事業者から手数料を受け取ることによって利益を得ることが一般的に考えられます。

代理店と大元の事業者との間の代理店契約で製品一つの代金に対して20パーセントの手数料が定められているとすれば,代理店が代理して本人である大元の事業者が第三者に8,000円の製品を売った場合に,8,000円の20パーセントである1,600円が手数料として代理店の経済的利益になるということです。

本日のブログは以上です。

次回は,販売店契約と代理店契約とのその他の違いについてご説明します。

 

コンビニで取得する証明書の確認方法

1 証明書がコンビニで簡単に発行できる

私が勤務している名古屋市では取り扱っていないようですが,市区町村によっては,住民票などの証明書をわざわざ役所に取りにいかなくても,コンビニで簡単に発行できる仕組みが作られています。

2 コンビニで取得した証明書の確認方法

もっとも,コンビニのような誰でも気軽に立ち寄れる場所で取得される証明書ですから,偽造されやすいのではないかとの心配もあります。

そのような心配を排除し,証明書として機能させるため,コンビニで発行される証明書には,偽造防止のためにいくつかの工夫がなされています。

⑴ けん制文字

コンビニで取得された証明書をコピーすると「複写」という文字が浮かびあがります。

これが浮かび上がっている場合には,コピーされていることが分かるので,何かしらの手が加えられている可能性があります。

⑵ スクランブル画像

コンビニで発行された証明書の裏面には,スクランブル画像が掲載されています。

このスクランブル画像は,証明書の表面に暗号処理を施し生成されたもので,問合せサイトを通じて,裏面の暗号を解除した画像がパソコンの画面に表示される仕組みになっています。

したがって,表面とパソコン画面を比べて改ざんされていないか確認することができます。

⑶ 偽造防止検出画像

コンビニで交付される証明書の裏面には,偽造防止検出画像が掲載されています。

検出画像の中にある潜像画像を確認することで,証明書が偽造されていないか確認することができます。

具体的には,専用のドライブレコーダーで偽造防止検出画像を映すと,潜像画像が現れる仕組みになっています。

 

⑴⑵⑶の方法を全てクリアすれば,よほどのことがない限り,コンビニで発行されたその証明書は偽造されていないといってよいでしょう。

⑶については,ドライブレコーダーの使い方を誤ると潜像画像が映らず,見ることができずに偽造防止措置の確認ができないということもあるので,注意が必要です。

本日のブログは以上です。

 

個人情報の保護(プライバシーマーク)

近時,企業が入手・管理する膨大な顧客情報は企業にとって最重要なビッグデータとなっています。

他方で,私たち一般人の個人情報は,多くの企業に把握されている可能性があり,厳重か否かに関わらず管理されているのです。

たとえば,私が名古屋で弁護士をやっているという情報もどこかの企業の顧客データベース上では管理されていることでしょう。

インターネットで企業を検索すると,プライバシーポリシー,個人情報保護方針などといった言葉を目にすることも多いことでしょう。

これは,各企業が,取得した顧客等の個人情報をどのような目的でどのように扱うのかが書かれているものです。

さらにプライバシーマークというものを見たことはあるでしょうか。

プライバシーマークとは,個人情報保護に関して一定の要件を満たした事業者に対して,一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)により使用を認められる登録商標のことをいいます。

プライバシーマークを取得することが義務付けられているものではありませんが,プライバシーマークの取得には個人情報保護に関する審査があるため,プライバシーマーク取得企業は,この審査に通っているということで個人情報の保護について一定の信頼が与えられます。

プライバシーマークを取得しているメリットの1つとして,取引先企業や一般の顧客からの信頼が向上するということが挙げられます。

やはり,個人情報について杜撰な管理をしている企業よりも適切な管理をしているとの認証を与えられた企業の方が,信頼されやすいといえます。

また,他のメリットとして,プライバシーマークを取得していることを入札条件や取引先選定条件としている場合にこれをクリアすることができる,社員が個人情報の取扱いについて意識を向上することができる,法令に遵守した社内の体制を確立することができることなどが挙げられます。

一方で,プライバシーマークのデメリットとしては,申請費用,審査費用,マーク使用料など費用がかかること,プライバシーマーク取得をコンサルタントに依頼した場合にはさらにコンサルティング費用がかかることが挙げられます。

さらに,取得までに一定の作業が必要になること,取得後も定期的に見直しを行わなければいけないこともデメリットとして考えられるものとなります。

とはいえ,取得しておけば,個人情報の取扱いについて他の企業よりも優れているとの印象を与えることができ,差別化を図ることができるものとなります。

逆に言うと,プライバシーマークを取得していないと他の企業に比べて個人情報保護に注力していないと見なされる恐れもあるものであり,この点からしてもプライバシーマーク取得は企業にとって重要なものといえるでしょう。

本日のブログは以上です。

ゴールデンウイーク

こんにちは,弁護士の井川です。

今年のゴールデンウイークは10連休とあり,海外に行かれるという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

一方で海外ではなく,国内でのんびりとゴールデンウイークを過ごされるという方もいらっしゃるかと思います。

私は,先日車を運転して滋賀県にある琵琶湖に行ってきました。

琵琶湖は,皆さまご存知のとおり,日本で一番大きな湖ですね。

対岸が見えず,まるで海のように感じるのは,毎回行っても変わりありません。

今回の旅では,琵琶湖のほかに,彦根城に行ってきました。

彦根城は,国宝5城の1つに数えられる立派なお城です。

現在,日本には現存12天守と呼ばれる12のお城があり,そのうちの5つが国宝とされています。

彦根城のほかには,姫路城,松本城,犬山城,松江城の4城が国宝とされています。

名古屋に在住の方であれば,犬山城はもちろんご存知でしょう。

また,名古屋からであれば,彦根城,松本城は比較的アクセスしやすいかもしれません。

さて,私の旅はと言いますと,彦根城近くの駐車場に車を止めてお城の近くまで散策しようと向かったのですが,そこはやはりゴールデンウイークということで非常に多くの車で駐車場に入るまでにすでに渋滞ができていました。

あまりの渋滞に気が滅入ってしまい,遠くから彦根城を拝んだのみで,その場を退散することにいたしました

彦根城を(遠くから)見終えたあとは,古き良き街並みが残る城下町の通りで名産である近江牛のランチをいただきました。

ほどよく霜降りの入った贅沢なお肉は,噛めば噛むほどに旨味が口の中に広がり,遠くまでドライブで来たかいがあったなと思わせてくれる一品でした。

帰りには,近江牛の肉寿司,近江牛のコロッケを買い食いして,お財布には少々厳しいものでしたが,存分に楽しんだドライブ旅となりました

さて,車でドライブ旅をしていると思うのですが,ゴールデンウイーク中には,車で観光地に出かける方もたくさんいらっしゃるかと思います。

その中で,どうしても発生してしまうものが,交通事故です。

ゴールデンウイーク中にも,交通事故のニュースはよく見かけました。

交通事故というものは,本当に突然の出来事であり,自分がどれだけ安全を心掛けていたとしても避けられない場合もあります。

交通事故の被害に遭われた方の苦しみというものは,非常に大きいものであることを日常の弁護士業務で知っております。

私が所属する弁護士法人心では,そのような苦しみを感じる方へ少しでも手助けをすることができるよう,日々交通事故案件に関する研鑽を積んでおります。

交通事故に遭われ,お困りの際には,ぜひ一度弁護士法人心へご相談ください。

本日のブログは以上です。

保険医療機関・保険医について

こんにちは,名古屋の弁護士の井川です。

今回のブログでは,皆さん当たり前のように利用しているため,意外と詳しくは知らない病院や医師についてお話します。

まず,皆さんが健康保険を使用して病院や診療所で治療などを受ける場合,基本的には健康保険法等の規定で規定されている療養の給付を行う病院・診療所で治療を受けており,これらの病院・診療所は保険医療機関と呼ばれています。

日本に存在する全ての病院・診療所が保険医療機関というわけではありません。

保険医療機関の指定は,病院・診療所の開設者が,自由意思に基づいて申請することにより,厚生労働大臣が行うと健康保険法第65条に定められています。

また,そのような保険医療機関である病院・診療所における診察や治療は,保険医として登録されている医師が行っています。

医師は,医師国家試験に合格し,医師免許を受けることにより自動的に保険医として登録されるわけではなく,保険診療を担当したいという医師の自らの意思により,勤務先の保険医療機関の所在地(勤務していない場合には住所地)を管轄する地方厚生(支)局長へ申請する必要があります。

保険医療機関である病院・診療所,保険医は,保険医療機関及び保健医療養担当規則という規則を遵守する必要があります。

この保険医療機関及び保険医療養担当規則とは,健康保険法等において保険診療を行ううえで保険医療機関と保険医が遵守すべき事項として定められた厚生労働省令であり,療養担当規則や療担とも呼ばれています。

厚生労働省保険局医療課医療指導監査室が平成30年に出している「保険診療の理解のために」の中では,保険診療として診療報酬が支払われるための条件の一つとして療養担当規則の規定を遵守することが定められており,保険医療機関,保険医にとって遵守すべき重要な規則となっています。

この療養担当規則の一部を紹介します。

療養担当規則第2条の4の2では,保険医療機関が患者に対して一部負担金の額に応じて収益業務に係る物品の対価の額を値引きする行為や事業者又はその従業員に対して,患者を紹介する対価として金品を提供する行為等を禁止しています。

すなわち,健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益の提供により自己の保険医療機関で診療を受けるよう誘引してはならないのです。

紹介の対価を支払うことなどは一般企業では日常的に行われているものともいえますが,保険事業の健全な運営を保つため,保険医療機関等がこれらの誘引行為を行うことは禁止されているのです。

療養担当規則については,今後のブログでも紹介をしていこうと思います。

本日のブログは以上となります。

 

平成の終わりに

こんばんは,弁護士の井川です。

平成31年の4月1日に,新元号が発表されました。

新元号は「令和」というそうですね。

私は,昭和の生まれですが,物心ついたときにはすでに平成の時代に入っており,人生のほとんどは平成時代でした。

平成といえば,みなさん当然「へいせい」と読みますよね。

もっとも,私の地元には,平成と書いて「へなり」と読む地域があります。

平成(へなり)にある道の駅には,平成が終わるこの4月,非常に多くの人たちが訪れているようです。

平成(へいせい)が終わってしまう寂しさもあるのでしょう,普段はそんなに人が来ることもない平成(へなり)の道の駅が現在は混雑しているようです。

さて,平成のように,一般的には「へいせい」と呼ばれている漢字が別の読み方をされるということは法律の世界でもあります。

たとえば,遺言という漢字。

遺言は,遺言書などで使用される言葉で,相続の分野で頻繁に耳にする言葉です。

皆さんも何度も聞いたことがある言葉だと思います。

この遺言という言葉,一般的には「ゆいごん」と言われます。

もっとも,法律の世界では,遺言という言葉を「いごん」と発して使用されます。

さきの遺言書も一般的には「ゆいごんしょ」と言われるのに対し,法律の世界では「いごんしょ」と言われます。

初めて法律相談に来る方にとっては,弁護士が「いごん」「いごんしょ」と言っていると,文脈で遺言,遺言書のことを言っていることは何となくわかるけれど,話がしっくりとこないかもしれません。

中には,相談にくる方に分かりやすいように「ゆいごん」「ゆいごんしょ」と一般的な発音に置き換えて説明してくれる弁護士もいます。

一方で,発音自体はあまり気にせず「いごん」「いごんしょ」として話をする弁護士もいらっしゃいます。

もっとも,そのような場合でも,法律の世界ではこのように発しますが,話している内容は相談者の方が思う遺言,遺言書のことですよ,と前置きをしたうえで説明をする弁護士が多いのではないでしょうか。

私が所属する弁護士法人心では,相談に来てくださるお客様のことを第一に考え,もっとも分かりやすいように「いごん」「いごんしょ」ではなく,「ゆいごん」「ゆいごんしょ」と発音することを心がけています。

普段から事務所内でも「ゆいごん」「ゆいごんしょ」と発音することで,常にお客様の視点で業務を行うということを意識しております。

弁護士に相談したいが,敷居が高く感じてなかなか相談に行けないという方にも親身になって相談に乗らせていただきます。

名古屋駅からすぐのところに事務所がありますので,電車でのお越しにも最適です。

法律問題でお困りの際にはぜひ一度弁護士法人心へご相談ください。

本日のブログは以上です。

 

弁護士事務所のスタッフ

こんにちは,弁護士の井川です。

4月に入り,多くの企業では,新入社員が入社していることでしょう。

企業によって求める人材や企業にマッチする人材はそれぞれであり,様々な入社試験,入社面接等をクリアしての入社になるかと思います。

これから社会の波に揉まれることもあるかと思いますが,無理をせず,頑張ってください。

さて,私が所属する弁護士法人心でも,4月から新卒で入所するスタッフさんたちがいます。

一般的に弁護士事務所と聞くと,すべて弁護士が取り仕切っていると思われることも多いですが,どの事務所もスタッフさんの活躍なくしては成り立ちません。

弁護士の業務というのは,お客様との相談,打ち合わせ,裁判,相手方との交渉など非常に多岐にわたります。

そのような中で,弁護士が真に依頼者のために業務をこなすことができるよう支えてくれているのがスタッフの皆さんなのです。

そのため,弁護士事務所では,弁護士の採用も重要ですが,それと同等あるいはそれ以上にスタッフさんの採用が重要なものとなります。

どの企業でも,優秀な人材,企業理念に沿う人材を求め,就活イベントに参加することがあるかと思いますが,当法人も同様に就活イベントに参加しております。

私も名古屋で開催された就活イベントに参加した経験がありますが,そこでは弁護士事務所に興味を持ってくれている就活生が多いことに驚いた記憶があります。

さて,弁護士事務所のスタッフさんがどのような仕事をしているのか興味を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。

弁護士事務所のスタッフさんの仕事として,弁護士の秘書を務めたり,お客様の対応を行ったりすることがあります。

とくに秘書業務は,弁護士が業務を遂行していくうえで必要不可欠な業務であり,弁護士の多くは,秘書を非常に頼りにしているのではないでしょうか。

また,お客様対応では,たとえば電話で相談の受付をするということがあります。

一般的に敷居が高いと感じられる弁護士事務所に初めて電話をして相談の予約をしようとするお客様にとって,電話に出た相手がどのような態度で接してくれるかということは,相談をするかどうか決めるにあたって非常に重要なポイントの一つになるかと思います。

弁護士法人心では,お客様に不安なく相談予約をしていただくためにも,言葉遣いや間の置き方など常にお客様の視点に立って電話での話を進めることを心掛けています。

私たちにとっても頼りになる弁護士法人心のスタッフさんが,お客様に親身に寄り添い気持ちよく弁護士に相談ができるよう対応させていただきます。

法律問題でお困りの際には,ぜひ弁護士法人心へご相談ください。

本日のブログは以上です。

 

就職活動

2月に入り,各方面で就職活動も本格化してきたのではないでしょうか。

就職活動と聞くと,履歴書を書いたり面接の練習をしたりといったことが一般的でしょうか。

大学生のころ,私はすでに弁護士を目指していましたので,就職活動というよりは,ロースクールに合格するための勉強をしていた記憶があります。

ただ,就職活動をしている友人も多くいましたので,その友人たちと一緒に企業の分析や自己紹介,他己紹介などを日々行っていたのは今でもいい思い出の一つです。

自分自身で自分自身のことを分析するとなると,なかなか難しいものですが,友人に聞いてみると自分がどんな人間なのかを指摘してくれて,それが案外しっくりくるというか,やはり大学時代を通じて一番近くで生活をともにしているだけあって,お互いのことをよく分かっているものだなと感じることも多々ありました。

また,就職活動中は,常にいい結果だけを得られるわけではないので,希望する職種になかなか採用が決まらず落ち込んでいる友人を見かけることもありましたが,そこを支えてあげられるのもまた友人の役割であって,一緒に美味しいご飯を食べ美味しいお酒を飲んで将来を語り合ったものです。

私の周りで就職活動を頑張っていた友人たちももう社会人として8年目になるのでしょうか,月日は早いものだと改めて感じさせられます。

これから就職活動を始める皆さんは,何から取り組めばいいのか,面接でどんなことを言えばいいのかなど色々な不安や悩みを抱いていることでしょう。

同じく就職活動を始める周りの人たちもきっと同じ不安や悩みを抱えているはずなので,一人で考え込まず,友人と話し合ってみるのも就職活動を円滑に行う一つの方法かもしれません。

皆さんが,自分の希望する環境へ就職できることを願っています。

もっとも,就職はゴールではありません。私が大学生のころにこの言葉を聞いてもあまりピンと来なかったでしょう。やはりその時代にはそれが全てだったとは思うのです。

ただ,社会に出て,仕事に励み,友人と親交を深め,また,家族ができたりすれば,やはり就職がゴールではないのだと気づくことでしょう。

人生には本当にいろいろなことがあります。

就職はその中のたった一つの事象にすぎません。

私の友人たちの中にも,同じ会社で勤務している人もいれば,新しい環境でバリバリ仕事をしている人もいます。本当に様々です。

就職活動を行うなかで,落ち込むこともあるでしょう。しかし,そんな時間はもったいない。気楽にと無責任なことは言えませんが,気持ちを切り替えて次に取り組むことはとても重要なことだと思います。

そして,あなたの気持ちを切り替えさせてくれる人たちは,すでにあなたの周りにいるはずです。

ぜひ,就職活動頑張ってください。

私の勤務する弁護士法人心も名古屋で就職説明会を行っています。

興味のある方はぜひ一度話を聞きに来ていただければと思います。

本日のブログは以上です。

 

医師法17条③

前回につづき,医師法17条の医業の意義についてのブログです。
前回紹介した高等裁判所の判決では,医師法17条の医業の意義について,以下のように判示しています。
(1)医師法17条は,「医師でなければ,医業をなしてはならない。」と規定し,これに違反した者は処罰される。本条は,医師でない者の医業を禁止したものであり,その結果,医師は医業を独占して行うことができることとなる。
ここでいう医業の概念について,医師法は全く規定しておらず,その理由としては,医業の具体的内容が,医学の進歩に伴い変化するものであるから,定義的規定を置くことが困難であり,また妥当でないということが指摘されている。そうすると,「医業とは,医行為を業として行うことである」とした上で,医師法の立法目的等により,医業の内容や限界を見極めながら,医行為を合理的に解釈するのが相当である。
医師法17条の医業の内容である医行為の意義について,「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」という要件,言い換えれば,「医学上の知識と技能を有しない者がみだりにこれを行うときは保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」という要件(以下「保健衛生上の危険性要件」ということがある。)が必要であることは,検察官と弁護人との間で解釈の相違はなく,原判決も同様に考えており,当裁判所にも異論のないところである。
争いがあるのは,上記要件のほか,上記行為の前提ないし枠組みとして,「医療及び保健指導に属する行為」,すなわち弁護人の主張する「医療関連性」という要件が別途,必要であるか否かである。
この点,従来の学説は,医行為を広義と狭義の2つに分け,広義の医行為とは,医療目的(医師法1条に定められた医師の職分からすれば,「医療及び保健指導の目的」とするのが正確である。)の下に行われる行為で,その目的に副うと認められるものとした上,疾病の治療・予防,出産の際の処置,あん摩,マッサージ,はり,きゅうなど医療目的に適う行為がここに含まれることになり,医師は当然にこれらの行為を業として行うことが認められるが,医師以外にも特定の行為についてその資格を有する者が行うことを認めるものも含まれると解し,他方,医師法17条により医師以外の者が業として行うことが禁じられる狭義の医行為とは,広義の医行為の中で,医師が医学的知識と技能を用いて行うのでなければ人体に危険を生ずるおそれのある行為であり,診療行為に限らず,輸血用の血液の採取,予防接種など医師が行うのでなければ,危険を生ずるおそれのある行為が含まれると解していた。弁護人の主張する医療関連性の要件は,結局,従来の学説が狭義の医行為について「広義の医行為の中で」という枠組みを設定していたのと同趣旨に帰着すると理解される。これに対し,検察官や原判決は,その後の学説が明示している定義や厚生労働省による行政解釈と同様,医業の内容である医行為は,保健衛生上の危険性要件があれば足り,「広義の医行為の中で」という枠組み,言い換えれば,医療関連性という要件は不要であると解しているのである。
当裁判所は,医業の内容である医行為については,保健衛生上の危険性要件のみならず,当該行為の前提ないし枠組みとなる要件として,弁護人が主張するように,医療及び保健指導に属する行為であること(医療関連性があること),従来の学説にならった言い方をすれば,医療及び保健指導の目的の下に行われる行為で,その目的に副うと認められるものであることが必要であると解する。その理由は,以下のとおりである。
(2)医師法は,医療関係者の中心である医師の身分・資格や業務等に関する規制を行う法律であるところ,同法1条は,医師の職分として,「医師は,医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し,もって国民の健康な生活を確保するものとする」と規定している。すなわち,医師法は,「医療及び保健指導」という職分を医師に担わせ,医師が業務としてそのような職分を十分に果たすことにより,公衆衛生の向上及び増進に寄与し,もって国民の健康な生活を確保することを目的としているのである。この目的を達成するため,医師法は,臨床上必要な医学及び公衆衛生に関して,医師として具有すべき知識及び技能について医師国家試験を行い,免許制度等を設けて,医師に高度の医学的知識及び技能を要求するとともに,医師以外の無資格者による医業を禁止している。医師の免許制度等及び医業独占は,いずれも,上記の目的に副うよう,国民に提供される医療及び保健指導の質を高度のものに維持することを目指しているというべきである。
以上のような医師法の構造に照らすと,医師法17条が医師以外の者の医業を禁止し,医業独占を規定している根拠は,もとより無資格者が医業を行うことは国民の生命・健康にとって危険であるからであるが,その大きな前提として,同条は,医業独占による公共的な医師の業務の保護を通じて,国民の生命・健康を保護するものである,言い換えれば,医師が行い得る医療及び保健指導に属する行為を無資格者が行うことによって生ずる国民の生命・健康への危険に着目し,その発生を防止しようとするものである,と理解するのが,医師法の素直な解釈であると思われる。そうすると,医師法17条は,生命・健康に対して一定程度以上の危険性のある行為について,高度な専門的知識・技能を有する者に委ねることを担保し,医療及び保健指導に伴う生命・健康に対する危険を防止することを目的としているとする所論の指摘は,正当である。したがって,医師は医療及び保健指導を掌るものである以上,保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為であっても,医療及び保健指導と関連性を有しない行為は,そもそも医師法による規制,処罰の対象の外に位置づけられるというべきである。

高等裁判所は,原審と異なり,医業の意義について,医療及び保健指導との関連性を必要としたのです。
この裁判は,検察側から上告がなされており,最高裁判所がどのような判断を下すのか,医療関係法務に携わる弁護士にとって注目される裁判の一つと言えるでしょう。
本日のブログは以上です。

医師法17条②

前回のブログの続きです。医師法17条についての高等裁判所の判断を紹介しています。

「医行為」に関する最高裁の判例(最高裁昭和30年5月24日第3小法廷判決(刑集9巻7号1093頁),同昭和48年9月27日第1小法廷決定(刑集27巻8号1403頁),同平成9年9月30日第1小法廷決定(刑集51巻8号671頁))について,弁護人が,これらの判例によれば,「医行為」の要件として「疾病の治療,予防を目的」とすることが求められていると主張するのに対し,原判決は,上記各判例の事案は,いずれも被告人が疾病の治療ないし予防の目的で行った行為の医行為性が問題となったもので,医行為の要件として上記目的が必要か否かは争点となっておらず,上記各判例はこの点についての判断を示したものではないから,本件において,「医行為」の要件として「疾病の治療,予防の目的」が不要であると解しても,最高裁の判例に反しない旨説示している。
ウ 次いで,原判決は,本件行為の医行為該当性について,被告人が行った施術方法は,タトゥーマシンと呼ばれる施術用具を用い,先端に色素を付けた針を連続的に多数回皮膚内の真皮部分まで突き刺すことで,色素を真皮内に注入し定着させるといういわゆる入れ墨を施すことであり,このような入れ墨は,必然的に皮膚表面の角層のバリア機能を損ない,真皮内の血管網を損傷して出血させるものであるため,細菌やウイルス等が侵入しやすくなり,また,被施術者が様々な皮膚障害等を引き起こす危険性を有しているとして,本件行為が保健衛生上の危害を生ずるおそれのある行為であることは明らかであると判断した上,入れ墨の施術に当たり,その危険性を十分に理解し,適切な判断や対応を行うためには,医学的知識及び技能が必要不可欠である,よって,本件行為は,医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為であるから,「医行為」に当たるというべきであるとの判断を示している。
そして,〔1〕入れ墨の施術によって障害が生じた場合に医師が治療を行えば足り,入れ墨の施術そのものを医師が行う必要はない,〔2〕被告人が使用していた色素の安全性に問題はなく,入れ墨の施術の際には施術用具や施術場所の衛生管理に努めていたから,本件行為によって保健衛生上の危害が生ずる危険性はなかった,という弁護人の主張に対し,原判決は,入れ墨の施術に伴う危険性や,施術者に求められる医学的知識及び技能の内容に照らせば,上記〔1〕の主張は採用できないし,医師法17条が防止しようとする保健衛生上の危害は抽象的危険で足りることから,弁護人が上記〔2〕で主張する事情は前記判断を左右しないとして,弁護人の主張を排斥している。

このように原審は,医業の意義について,弁護士が主張する医療関連性を不要とし,医師が行うのでなければ保健衛生上の危害を生ずるおそれのある行為で足りると判断しています。
高等裁判所では,この原審の判断が争われ,覆されたのです。
高等裁判所の詳しい判示内容は次回紹介します。

医師法17条①

平成30年11月14日に,医師法17条の医業の解釈についての高等裁判所の判断がでました。
今回はこの判決について3回にわけてご紹介します。
この裁判は,被告人が,医師でないのに,業としてタトゥーショップにおいて針を取り付けた施術用具を用いて皮膚に色素を注入する医行為を行い,もって医業をなしたものとして,医師法17条違反の罪に問われたものです。
原審では,被告人の行為が医師法17条の医業に該当するとして,被告人は有罪とされていました。

原審の判断に対しては不当であると考える弁護士も複数いました。
そして,高等裁判所は,原審のこの判断を覆し,被告人を無罪としたのです。
以下,高等裁判所の判断を抜粋します。
まず,高等裁判所は,原審の判断の概要として以下のとおり述べます。
原判決は,本件の争点を,〔1〕針を取り付けた施術用具を用いて人の皮膚に色素を注入する行為(以下「本件行為」という。)が医師法17条の「医業」の内容となる医行為に当たるか否か,〔2〕医師法17条が憲法に違反するか否か,〔3〕本件行為に実質的違法性があるか否か,であるとして,後記のとおり,〔1〕については,本件行為は医師法17条にいう「医業」の内容となる医行為に該当する,〔2〕医師法17条は憲法31条に違反するものではなく,また,本件行為に医師法17条を適用することは憲法22条1項,21条1項,13条のいずれにも違反しない,〔3〕本件行為には実質的違法性が認められるとの判断を示し,本件公訴事実どおりに罪となるべき事実を認定した上,本件行為に医師法31条1項1号,17条を適用して被告人を罰金15万円に処したものである。
(1)本件行為の医行為該当性に関する原判決の判断要旨
ア 原判決は,「医行為」の意義について,医師法17条は,医師の資格のない者が業として医行為を行うこと(医業)を禁止しているところ,これは,無資格者に医業を自由に行わせると保健衛生上の危害を生ずるおそれがあることから,これを禁止し,医学的な知識及び技能を習得して医師免許を得た者に医業を独占させることを通じて,国民の保健衛生上の危害を防止することを目的とした規定であるとし,同条の「医業」の内容である医行為とは,医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為をいうと解すべきである,と説示する。
イ そして,原判決は,医師法17条及び同法1条の趣旨や法体系から,「医行為」とは,〔1〕医療及び保健指導に属する行為の中で(医療関連性),〔2〕医師が行うのでなければ保健衛生上の危害を生ずるおそれのある行為をいうと解すべきであるという弁護人の主張に対し,その主張によれば,医療及び保健指導に属する行為ではないが,医師が行うのでなければ保健衛生上の危害を生ずるおそれのある行為(美容整形外科手術等)を医師以外の者が行うことが可能となり,このような解釈が医師法17条の趣旨に適うものとは考えられないし,弁護人の主張は,法体系についての独自の理解を前提とするものであるとして,弁護人の主張を排斥している。

続きは次回のブログでご紹介します。

景品表示法の優良誤認表示・有利誤認表示

景品表示法5条は,「著しく優良であると示す表示」(1号,優良誤認表示)や「著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」(2号,有利誤認表示)をすることを禁止しています。
禁止される表示は,実際の商品・役務の内容・取引条件よりも著しく優良または著しく有利であると一般消費者に誤認される表示です。
これは,景品表示法の不当表示規制の趣旨が,表示事業者と一般消費者との間に商品・役務の内容・取引条件についての情報や知識に大きな格差がある蓋然性が高く,表示対象商品・役務を選択する際に事業者による表示を主な手がかりとすると考えられる一般消費者が適正な選択を行えるよう,適正な表示を確保するという点にあることに基づきます。
景品表示法が,一般消費者に誤認される表示を行うことを禁止しているため,事業者が一般消費者に向けて商品・役務について示す表示が,景品表示法上の不当表示規制の対象となります。
優良誤認表示,有利誤認表示,いずれもおおむね以下のパターンに分けられます。
優良誤認表示
実際の商品・役務の内容よりも著しく優良であると一般消費者に誤認される表示
競業事業者の商品・役務の内容よりも著しく優良であると一般消費者に誤認される表示
有利誤認表示
実際の商品・役務の取引条件よりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
競業事業者の商品・役務の取引条件よりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
たとえば,一般消費者が実際よりも「有利」であると認識し取引に誘引される表示の例としては,価格等を事実より得であるかのように示す表示の他,価格等そのものは事実であるものの当該価格等が特別な期間や特別の者だけに適用されるかのように示す表示も挙げられます。
ずっと同一価格で販売しているにも関わらず,今だけ○○円,などと表示をして販売することは,一般消費者が実際よりも「有利」であると認識し取引に誘引される表示の例と言えるでしょう。

実際に私が勤務している名古屋でも今だけ○○円としているお店を見かけることがあります。
今だけ期間限定で割引されるという表示は,いつかは対象商品・役務を利用してみたいと考えている一般消費者に一歩を踏み出させる契機となるものであり,表示と実際の相違は,一般消費者による商品・役務の選択に影響を与えるので,「著しく」有利であると誤認される表示であると判断されやすいでしょう。
近年,このような表示に対して消費者庁が措置命令を複数行っているということもあり,特に注意が必要と言えるでしょう。

医師法第17条の「医業」

医師法17条は,「医師でなければ,医業をなしてはならない」と規定しています。

ここでいう「医業」とは一体なんでしょうか。

平成17年7月26日医政発第0726005号は,「医業」とは,当該行為を行うに当たり,医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし,又は危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)を,反復継続する意思をもって行うことであると解しています。

また,医行為の該当性について,大阪地裁平成29年9月27日判決は,医師法17条の「医業」については,一般に「医行為を業として行うこと」と解されている。医行為の意義が問題となるが,学説上の通説は,「医師が行うのでなければ保健衛生上の危害を生ずるおそれのある行為」と解しており,判例も同旨であると理解されている。と述べています。

もっとも,ある行為が医行為であるか否かについては,個々の行為の態様に応じ個別具体的に判断する必要がありますし,「医師が行うのでなければ保健衛生上の危害を生ずるおそれのある行為」とはどのような行為であるか問題となりえます。前掲大阪地裁平成29年判決は,医師免許を有しない入れ墨の施術業者である被告人が,業として,針を取り付けた施術用具を用いて皮膚に色素を注入する行為(いわゆる入れ墨)を行ったとして,医師法17条の罪に問われた事案で,被告人の行った行為が「医師が行うのでなければ保健衛生上の危害を生ずるおそれのある行為」すなわち医行為に該当すると判断しています。

前掲大阪地裁がかかる判断をした理由の全ては今回は割愛しますが,おおまかにいいますと,被告人の行っていた入れ墨行為は皮膚表面の各層のバリア機能を損ない真皮内の血管網を損傷して出血させるものであるため,細菌やウイルス等が侵入しやすくなり,皮膚障害等を引き起こす危険性を有していること,施術に使用される色素に重金属が含まれていた場合には,金属アレルギー反応が生じる可能性があるし,重金属類が含まれていなくとも,色素が人体にとって異物であることに変わりはないためアレルギー反応が生じる可能性があること,入れ墨の施術には出血を伴うため,被施術者が何らかの病原菌やウイルスを保有していた場合には,血液や体液の管理を確実に行わなければ施術者自身や他の被施術者に感染する危険性があること,などを理由に被告人の行っていた入れ墨行為が保健衛生上の危害を生ずるおそれのある行為であることが明らかであると述べています。

なお,本判決は,裁判官や弁護士のような法律家であっても,具体的事案を考えるにあたっては,医療のような他分野における知識が必要となる場合があるということを再確認できる内容の判決でもあります。

興味を持たれた方は,是非一度判決の全文を見てみると良いかもしれません。

本日のブログは以上です。

 

弁護士を選ぶポイント

1 弁護士を選ぶ際に重視するポイント

弁護士を選ぶ際のポイントとしてまず大切なのは,相談者が相談したい内容を得意とする弁護士に相談・依頼をするということです。

弁護士の中でも得意分野は分かれているため,相談したい内容を得意としている弁護士を探す必要があります。

たとえば,交通事故を集中的に取り扱っており,交通事故に関する知識・ノウハウについては膨大な蓄積があるけれども,交通事故関連以外の法律にはあまり詳しくはないという弁護士もいます。

また,たとえば,相談者の方の債務に関するご依頼について得意としており,債務整理等に関する相談であれば他の弁護士よりも的確にスムーズに受けることができるけれども,債務整理等に関する相談以外の相談はあまり得意としていないという弁護士もいます。

そこで,弁護士に相談をする時には,自分の相談したい内容を得意としている弁護士を探し出して相談することが重要となってきます。

2 相談する弁護士を決める際のポイントはその他にも

次に弁護士を選ぶポイントとして大切なのは,料金です。

最近は,相談料無料と記載している弁護士事務所も多くなってきました。

どこまでの相談なら無料であるのか,いつまで無料で相談を聞いてくれるのか,このような細かい点は弁護士事務所によって異なる場合があるので,一度問い合わせてみて,納得した上で相談をするということも弁護士を決める際のポイントになると思います。

このほかに,弁護士を選ぶ際のポイントとしては,実際に相談・依頼をする弁護士の人柄という点も考えられます。

訴訟に強いと噂でも,高圧的な態度でしか接してこない弁護士には依頼をしたくないと思う相談者の方は比較的多いと思われます。

案件の内容によっては,長い期間弁護活動をしてもらうことになる相手ですので,人柄というのは弁護士を決める際の大切なポイントとなりうるのです。

他にも弁護士を選ぶポイントはたくさんあると思います。

ご自身にあった弁護士を探して,相談・依頼をすることをお勧めします。

相談する弁護士を選ぶ際には,ポータルサイトを利用することもポイントとなってくるでしょう。

最近では,弁護士を紹介しているポータルサイトを見かけることが多くなりました。

ご自身が交通事故の問題で困っているという場合には,ポータルサイトの中で交通事故を得意としている弁護士を探すということも相談内容にあった弁護士を選ぶ際のポイントの一つです。